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映画
「聖地には蜘蛛が巣を張る」感想
正義とは何か?重い映画が好みの人におすすめ。

映画(2023年以前の公開)

映画「聖地には蜘蛛が巣を張る」を観ました。とても重い内容ですが、スリリングで飽きさせない演出で良質な映画です。

サスペンスというよりも人間・社会派ドラマの要素が強いと思います。

作品情報・あらすじ

タイトル:聖地には蜘蛛が巣を張る
原題:Holy Spider
出演者:ザーラ・アミール・エブラヒミ、メフィディ・バジェスタニ
監督:アリ・アッバシ
公開:2023年4月14日
備考:第75回カンヌ国際映画祭女優賞

<あらすじ>

2000年代初頭。イランの聖地マシュハドで、娼婦を標的にした連続殺人事件が発生した。「スパイダー・キラー」と呼ばれる殺人者は「街を浄化する」という声明のもと犯行を繰り返し、住民たちは震撼するが、一部の人々はそんな犯人を英雄視する。真相を追う女性ジャーナリストのラヒミは、事件を覆い隠そうとする不穏な圧力にさらされながらも、危険を顧みず取材にのめり込んでいく。そして遂に犯人の正体にたどりついた彼女は、家族と暮らす平凡な男の心に潜んだ狂気を目の当たりにする。

映画.com:https://eiga.com/movie/97007/

事前に知っておくべき内容

公式HPやチラシなどに載っている内容です。ネタバレでは無いです。アリ・アッバシ監督から「聖地には蜘蛛が巣を張る」についての説明です。

映画の背景について話しているので、観る前に読んでおくと入りやすいです。

映画化のきっかけ

『聖地には蜘蛛が巣を張る』は、イランで最も悪名高き連続殺人犯、サイード・ハナイの壮絶な一生を描いた作品だ。犯人が敬虔な信者で模範的な人物であることを踏まえると、イラン社会に対する風刺作品であるともいえる。ハナイが聖なる街マシュハドで娼婦を襲っていた2000年代初頭は、私もまだイランに住んでいた頃だった。ハナイは、逮捕され、裁判にかけられるまでに、16人もの女性を殺害した。私がこの事件に関心を持ったのは、その裁判が行われている時だった。普通の世界なら、16人も殺した男は犯罪者として見られるはずだ。しかし、ここでは違った。一部の市民や保守派メディアは、ハナイを英雄として称え始め、ハナイは“汚れた”女たちを街から始末するという宗教的な務めを果たしただけだと擁護したのだ。私はそれを知った時に、この出来事を基に映画を作ろうと思った。

公式HP:https://gaga.ne.jp/seichikumo/about/

・作ろうとしたもの

連続殺人犯の映画を作りたかったわけではない。私が作ろうと思ったのは、連続殺人犯も同然の社会についての映画だった。イラン社会に深く根付いている女性蔑視(ミソジニー)の風潮は、宗教や政治が理由というわけではなく、単純にそういう文化として存在している。女性蔑視は、国に限らず、人々の習慣の中で植え付けられる。イランには昔から、女性を憎むべき対象とする考えがあり、差別というかたちになって現れることも少なくない。それがありのままに描かれているのがハナイの物語だ。だからこそ、彼の物語を伝えるならば、賛成から反対意見まで、イラン社会には様々な意見が行き交っていることを示す必要があったのだ。

公式HP:https://gaga.ne.jp/seichikumo/about/

・犯人(サイード)について

サイード・ハナイは加害者であり、被害者でもある。イラン・イラク戦争では、兵士として青春時代を国に捧げた。国はより良くなり、意義深い人生になると思ったのだろう。しかし、そこで彼が気づいたのは、戦争で身を犠牲にしたところで何も変わらず、社会にとっては自分はどうでもいい存在であるということだった。彼は自分の存在意義を失うも、神を信じることはやめなかった。ハナイはモスクに通い、礼拝堂で涙を流す。そこで彼は、アッラーからの使命という新たな目的を見つけるのだ。

公式HP:https://gaga.ne.jp/seichikumo/about/

・描く内容

『聖地には蜘蛛が巣を張る』は、イラン政府への批判でも、腐敗した中東社会に対する批判でもない。一部の人達、中でも女性に対する人間性の抹殺は、イランに限ったことではなく、世界中のあらゆる場所で起きている。

私は、本作を、社会問題を扱った作品ではなく、特定の人物に焦点を当てた物語として捉えている。ハナイの物語や人格に支配されてしまうような作品にはしたくなかった。一人の男がどんな方法を駆使して大勢の女性を殺したのかを描くより、問題の複雑さと様々な立場の主張に光を当てたいと思った。それは事件の被害者のためでもある。また、ラヒミの物語も、ハナイと同じく本作のカギとなる。彼女が事件を追う姿を描きながら、家族、社会、そして自己との葛藤をどのように乗り越えるのかに迫りたいと思った。

ハナイの被害者となった女性達を、娼婦という肩書だけで片づけることはできない。彼女たちは皆、一人の人間として存在していたのだ。そんな彼女たちから奪われてしまった尊厳と人間らしさが、少しでも取り戻せることを願っている。聖人としてでも、不運な被害者としてでもなく、私達と同じ一人の人間として。

公式HP:https://gaga.ne.jp/seichikumo/about/

何が正しい行いか?

引用:https://gaga.ne.jp/seichikumo/about/

映画を観ながら考えたのは、何が正しい事なのか?という疑問でした。犯人は娼婦を殺す事が正しい行いだと思っている。

「犯人は頭がおかしい訳ではない」という描かれ方に恐ろしさを感じた。人を殺しているのだから、どこかおかしいのは確かですが、それは客観的な判断であって本人は「何が悪いんですか?正しい行いをしたんですよ」という態度に驚きます。

娼婦を殺す時に苦労を滲ませる姿に、私は困惑し、何が正しい事なのか・・・?という感覚になってしまいました。この描写は一番観て欲しいポイントです。

歪んだ社会

引用:https://gaga.ne.jp/seichikumo/about/

この映画の見どころは、誰が犯人なのか?という事ではないです。

犯人に対するイラン社会の反応がメインになっています。連続殺人に対して、普通では考えられない反応が描かれています。

この描写は、実際でも同様だったらしく、そこがこの映画のテーマになっているのだと思います。

映画の結末として、監督から何かを委ねるというよりも強いメッセージのようなものを感じました。考えるべき事は多くありますが「どういう事?」となる結末ではありません。

まとめ・評価

すごく重いものを突きつけられる映画ですが、個人的にはとても好きです。市街地の不気味な演出(音楽や効果音)が効いてて、展開もスリリングです。また、物語が難しくて判らないという事はないです。

アリ・アッバシ監督の過去作も観てみようと思います。

<映画の評価>
☆6個/8個満点

作品ポスター:(C)Profile Pictures / One Two Films

「ボーダー 二つの世界」(2019年/110分)アリ・アッバシ監督

<DVD>

<Amazon Prime Video>

タイプが似ているオススメの映画「母の聖戦」(2023年/135分)

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