映画「怪物」を観ました。ひと言で素晴らしい脚本だったと思います。宣伝では内容にほとんど触れていなかったので出来を疑ってましたが、逆に裏切られました。人間ドラマが好きな人にはおすすめです。
<映画の評価>
☆6個/8個
(*評価の目安:☆6個以上は自信を持ってオススメ!)
*今回はHPやチラシ以上の情報を出さないとブログが書けないので、多少中身に触れています。しかし、ネタバレになる程の内容ではありません。ご承知おき下さい。
作品情報・あらすじ・映画館
タイトル:怪物(かいぶつ)
出演者:安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太
監督:是枝裕和
脚本:坂元裕二
音楽:坂本龍一
上映時間:125分
公開時期:2023年6月2日
備考:第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門 脚本賞受賞
<あらすじ>
大きな湖のある郊外の町。息子を愛するシングルマザー、生徒思いの学校教師、そして無邪気な子どもたちが平穏な日常を送っている。そんなある日、学校でケンカが起きる。それはよくある子ども同士のケンカのように見えたが、当人たちの主張は食い違い、それが次第に社会やメディアをも巻き込んだ大事へと発展していく。そしてある嵐の朝、子どもたちがこつ然と姿を消してしまう。
映画.com:https://eiga.com/movie/98367/
映画を見た者として、このあらすじ紹介文が正しいとは思えない・・・です。公式HPと同じ文面なんですが・・・。
これから観る人はあまり読み込まずに映画を観てしまった方が良いと思います。
監督・脚本・音楽・出演者
私の主観も交えてスタッフ・キャストをご紹介します。
(監督)是枝裕和:自然な芝居と引き出す演出が得意な監督。作風は社会派・人間ドラマが多いです。 最近の主な作品は代表作は「そして父になる」「万引き家族」「ベイビー・ブローカー」など。
作っているジャンルは好みなのですが、実はあまり得意じゃないです。映画のテーマを観ている人委ねる感じの演出があまり好きじゃないのです。
(脚本)坂元裕二:ドラマ「カルテット」「大豆田とわ子と三人の元夫」「初恋の悪魔」など。
構成を入れ替えたりして「捻った脚本かな?」となるところを、それを必然に思わせてしまう手腕は凄いと思う。
(音楽)坂本龍一:主な劇伴映画「戦場のメリークリスマス」「ラストエンペラー」「レヴェナント蘇りし者」「怒り」
完全に世界レベルの音楽家。担当している映画がメジャー過ぎる。とはいえ、あまり主張しすぎず映画にそった音楽を付けている事が素晴らすぎる。今回も不穏な空気感を生み出していたと思う。
(湊の母役)安藤サクラ:主な出演映画「万引き家族」「ある男」など。
とても自然で、且つ強い存在感を出す女優だと思う。本作でも彼女以外は考えられない程のはまり役だった。
(保利先生役)永山瑛太:主な出演映画「友罪」「護られなかった者たちへ」など。
イケメンの役から、不気味な役までこなす上手い役者だと思う、本作では不気味さと誠実さが良いバランスを取っていた。
映画の見どころ
脚本の構成・セリフと見事な演技が見どころです。
主観の視点が入れ替わる構成になっていて、これによって「人間は自分に都合の良い方向」に考えてしまうだなーと痛いほど考えさせられます。
主観になっている人物の考えている事と客観的に観ている(観客)とではズレがあり観ていて「それには理由があって・・・」など、もどかしくなります。
それぞれの主観を演じる上で、「自分は間違ってない!」という正当性を主張する芝居がお見事でした!これには台詞のうまさもあって、わざとベタな台詞を入れているんじゃないかと思います。こんな事なかなか出来ないです。
この映画の凄いところ
身近なところにある感情が「怪物」になってしまう可能性を見出した点は凄いと思います。
予告では、インパクトのあるシーンを断片的に見せてますが、中身はそこまで衝撃的な事が起こるわけではないです。
にもかかわらず「怪物」のような感情を感じさせる演出が上手いです!
残念だったところ
結局は、観た人にいろいろ委ねる形になっている点は残念でした。3つの構成になっているが、どうしても説明不足なところがあります。おそらく全部を細かく説明しても蛇足になるという理由でしょう。
「アレはどういう意味?」とか「あの後どうなったの?」みたいな引っ掛かりが溜まっていくと、どうしても本筋から意識が離れてしまいます。
好みの問題でしょうが、観た人に想いを委ねるならば、説明が十分にされた状態で委ねるべきだと思います。
まとめ
脚本と演技は間違いなく素晴らしいものだったと思います。ただ個人的にテーマを委ねる演出に疑問を持ってしまったという点は少しマイナスです。
宣伝やタイトルから何か怖い(ホラー)的な映画だと思っている人がいるかもしれませんが、全然そんな事はないです。
では、またどこかで。
作品ポスター:(C)2023「怪物」製作委員会
「怪物」ノベライズ
「怪物」のノベライズはどんな風の書かれているのか?映画を観て気になりました。
コメント